イップスの原因と改善法〜野球イップスの方とのレッスン〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは、アレクサンダーテクニーク教師の土橋です。

先日、大学で軟式野球部に所属している学生の方にレッスンを行いました。

彼は1年前からイップスの症状に悩んでいるとのこと。

ピッチャーをしているが、ピッチングはもとより今は普通にキャッチボールをするのも難しい状態になっているようです。

ちなみにイップスというのは、「精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、突然自分の思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状」のことです。(wikipediaより)

音楽家でいうところのフォーカルジストニアと同じ症状だと僕は考えています。

今回は彼とのレッスンを事例にイップスの原因とその改善法についてお伝えします。

イップスに悩む方はもとより、音楽家のジストニアや本番での緊張に悩んでおられる方にも参考になると思います。

目次
1、イップスになった原因の見立て

2、イップス改善の為の3ステップ
①観察する
②意識を変える
③結果を考察する

3、イップス改善の為に必要な2つのアプローチ

1、イップスになった原因の見立て

レッスンで始めに行うのは、まず情報収集。

彼とのカウンセリングをして分かったことは、

・高校までは硬式野球をしていて、大学から軟式野球に変わったこと。

・そしてボールの形状や重さ・硬さが変わったことで、その感覚の変化に違和感を感じながら投げていた。

するとあるときから、バントトスをするとき思ったところに投げることが出来なくなった。

その後、ますます悪化してきてピッチングで暴投するようになり、今は普通にキャッチボールをするのも難しくなった。

・チームにはピッチャーが2人しかおらず、チームに申し訳ないと責任を感じている。

ここまで話してもらってイップスが発症したおおよその原因が分かりました。

原因の一つは、彼が過去(硬式野球をしていた頃)の感覚に囚われ、現在(軟式野球)に適応できなかった、あるいは適応しようとしなかったことです。

ボールが硬式から軟式に変われば、感覚が変わるのは当然です。

過去の感覚(硬式)を頼りながら、その感覚を軟式に適応させようとすると身体に無理が生じます。

本来であれば、過去の感覚は横において、新たに軟式のボールに身体を適応させようとするという意識が必要です。

このケースでは、違和感を無理に押さえ込みながら投げていた結果、イップスが発症し、その(トラウマ)体験を繰り返すことでさらに状況が悪化してきたと考えられます。

もう一つの原因と考えられるのは、過度な責任感です。

彼はこのような症状が発生しているのに関わらず、チームにはピッチャーが2人しかいなく皆に迷惑をかけるので、すぐにでも治して明日の試合で投げようと考えていました。

このような焦りは、症状を引き起こし状態を悪化させます。

適切な責任感をもちろん必要ですが、症状を改善するためには現状を冷静に受け入れ、改善の為に一つずつステップを踏んでいくしかありません。

このような精神状態になることを防ぐには、本人の意識も大切ですが監督やチームメートといった周りの理解やサポートが必要です。

このような見立てをした上で、レッスンを進めていきました。

2、イップス改善の為の3ステップ

ステップ1 観察

まずは今どのような状態にあるのか観察していきます。

ここからは、彼とキャッチボールをしながら、実際どのような状態なのかプレーを見せてもらいました。

近距離でキャッチボールをする分には、普通に投げれるとのこと。

徐々に距離を離していきある距離までくると、違和感を感じコントロールが効かなくなるようです。

違和感なく投げれる距離と、違和感を感じる距離で交互に投げてもらい、その時の違いを観察してもらいました。

そうすると距離が離れると、スピードが必要になるので、その時力んでしまうのかもしれないということに気づかれました。

このようにどこまではOKで、どこから問題が発生するのか?その時の違いは何か?ということを一つずつ丁寧に見ていき情報を集めていきます。

この時点で少なくともキャッチボールで暴投するということはなくなっていたので、状況を認識するだけで状態はある程度改善していました。

人は今自分がどのような状態にあるかをということを認識できると安心して余計な緊張が減るからです。

ステップ2 意識を変える

その後、実際に身体をどのように意識して投球していくのかをお伝えしていきました。

彼の投球フォームはアンダースロー(横投げ)だったので、動きのポイントとして、身体の軸(脊椎と骨盤)の回旋と身体を低くするときの股関節の使い方がポイントでした。

脊椎の回旋の仕方と股関節の使い方を意識して投球してもらうと違和感なくスッと投げるれるようになりました。

ステップ3 結果を考察する

最後に始めにやっていた投げ方と、身体の使い方を意識した投げ方にどんな違いがあったかを考察してもらいました。

身体を意識できているときは、腕や肩に違和感が生じることなくスッと投げれるということに気づかれました。

アンダースローの投球では、身体を屈めながら体を捻るという動作になるので、身体を適切に使わないと身体を固めやすくなります。

ここまでのレッスンで、身体の意識が変わることで、イップスの症状が解消されることは分かりました。

次のステップとしては、これを実際の試合の場面で意識できるようにすることです。

3、イップス改善の為に必要な2つのアプローチ

これについては過去に失敗した記憶や実際の試合の場面を想定したイメージトレーニングを行っていきます。

脳は現実とイメージの区別をつけることが出来ないという特性を持っています。

ですので、その場面をイメージすると、そのことが身体反応として表れます。

レモンや梅干しをイメージすると、なんだか酸っぱい感じがして唾液が出ますよね。

この脳の特性を利用します。

場面をイメージした時に起こる身体反応を観察し、その時に起こる身体の余分な緊張をやめることが出来るようになると、その場面を思い出しても身体が緊張しなくなります。

いわゆるトラウマを解消させるわけです。

次回以降のレッスンでこのことに取り組んでいきます。

まとめるとイップスやフォーカルジストニアといった症状を改善するには、以下の2つが必要になります。

まとめ イップスの根本改善の為には、

①今起きている状況に対する身体の反応の仕方を変える。

②過去の記憶に対する身体の反応の仕方を変える。

これら両方をみていくことで、イップスやフォーカルジストニアの症状は改善していきます。

アレクサンダーテクニークの創始者であるF・M・アレクサンダーさんは、舞台俳優であり声優でもありました。

アレクサンダーさんが悩まされた症状は、普段話しているときは大丈夫なのに、舞台に上がると声が出なくなるという症状でした。

特定の場面で思い通りの動作が出来なくなるという点で、今でいうフォーカルジストニアやイップスと同じ症状だと考えられます。

アレクサンダーさん自身が、自分でその症状を改善するために発見してきた手法がアレクサンダーテクニークです。

ですのでフォーカルジストニアやイップスといった症状の改善に大変効果的ですし、これほど効果的なものは他にはなかなかないと思います。

この手法をイップスやフォーカルジストニアに悩んでおらえる一人でも多くの方に伝えていきたいです。

そこまで苦しむ必要はないんです。

適切なやり方で一つ一つ順を追って対処していけば必ず症状は改善します。

これを伝えていくことが僕の人生における一つの役割だと思っています。

イップスやフォーカルジストニアで悩んでおらる方で、記事を読まれ興味を持って下さった方は是非一度お問い合わせください。

また参考になりましたら、是非記事をシェアして頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします!



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